にんにくの収穫と世界のにんにく祭り

にんにくの品種と繁殖方法

にんにくの品種と繁殖方法
にんにくは、植物学的にアスパラガス目ネギ科ネギ属に分類されます。ネギ、タマネギ、ニラ、ラッキョウ、アサツキなど風味のある野菜が同じネギ属です。学名をアリウム・サチバム(Allium sativum)といい、サチバム(sativum)とはラテン語で“栽培”という意味を持っています。世界で栽培されているにんにくの品種は、大まかにわけると栽培地の気候風土に適応した「暖地系」と「寒地系」に分類することができます。
にんにくは、種をまいて育てるのではなく種球(りん片)を使って植え、一個のにんにくになるまで育てます。種球の植え付けから収穫までは約10ヶ月ほどかかり、他の作物と比べても長い栽培期間を必要とします。胚・種子を経由せずに次の世代の植物が繁殖する無性生殖の方法を栄養繁殖といいます。通常の種子植物では、1個の植物から4〜8ヶ月で、100〜1,000個の種子が採れることを考えると、にんにくの増殖率は非常に低いといえます。しかしながら、親(にんにくでは母球)は、確実に5倍から10倍の子供を残して1年の寿命を終えます。それでも、多年草と呼ばれるのは、種子繁殖ではなし得ない確実な繁殖法を身に着けたからではないでしょうか。

にんにくは本来大変強い作物

にんにくは本来大変強い作物
にんにくは強烈なにおいをつくる能力を身に着け、害虫や細菌などに打ち勝って生育する大変強靭な植物です。つまり、大変ユニークな植物であるといえましょう。実は、このことが災いして、畑で生育していく上に困難な目に遭うことがしばしば起こるのです。「蓼食う虫も好き好き」という言葉がありますが、まさに、「にんにく大好き」という虫(くわしくは、線虫)や微生物(かびや細菌)が、にんにく畑に集まってくるのです。庭先などでにんにくを作ったことがある方は、にんにくが特に何もしないでも元気に育つことを知っていると思います。そのやさしさは、時々作ってみたり、植える場所が変わったりしているからなのです。これが、畑で毎年たくさんのにんにくを作るとどうなるでしょうか。新しいにんにくを待ち受けている勢力(病害虫)が数を増して、「食べたーい」と言っているに違いありません。そこで農家では、今年作った畑には続けて作らずに、翌年は別の畑に移って作るようにしたり(隔年栽培)、続ける場合(連作)には、種を植える前に農薬でよく土壌消毒(燻蒸)してから植付け、生育してきたら葉に適宜消毒をするのです。にんにくの多くがそのようにして育てられてきました。いや、現在でも、そうして収穫されたにんにくが大部分でしょう。
さて、そのような事情から、「にんにくを無農薬で大量生産することは無理だ」と考えられてきました。
しかし、この「無農薬での大量生産」を実現させた農場があるのです。宮崎県にある『健康家族』の自社農場では、なんと東京ドーム約11個分にも及ぶ広大な農場で、にんにくの有機栽培を実現させているのです。これは途方も無い労力を要することで、にんにくに対する愛情がなければ到底続けていくことはできない規模です。人の手による丹念な作業こそがにんにくの有機栽培を可能にする唯一の道なのですから。次の章では、その農場で行われた収穫祭をご紹介します。

有機栽培で育ったにんにくの収穫祭

ここは、宮崎県にある健康家族の自社農場。鹿児島市内から車で1時間ほどの距離に位置する大農場です。
ここで収穫されるにんにくは、まさにオリジナル・ブランドの「にんにく王」で、生育・保存状態がよいために、にんにくパワーの源である「GSAC」が豊富に含まれています。

この農場では、毎年5月の収穫の時期に『伝統にんにく卵黄』の愛用者の皆さんが招かれ、健康家族の社員の皆さんと一緒に、にんにくの収穫をお祝いして収穫体験を実施しています。
今年(2012年)は小雨の降る悪天候にもかかわらず100名以上の愛用者の皆さんが参加されました。愛用者の皆さんは、毎日にんにくに親しまれている方ばかりですが、「にんにく畑を見るのは初めて」という方も多く、見渡す限り広がる農場の様子に「こんなに広い畑をどうやって手入れしているの?」と感嘆の声をあげられていました。この農場では収穫時期ともなれば、畑一面ににんにくの香りが広がります。農場の大きさもさることながら、一帯に漂うにんにくの香りに、偉大な自然の力を感じた方も多いのではないでしょうか。

有機栽培で育ったにんにくの収穫祭

にんにくの収穫時期には、まず「葉」をチェックします。にんにくの葉は、収穫時期に約70cmの高さに成長していますが、3分の2ほどがうっすらと黄色く変わっていたら収穫のサイン。根本を真っ直ぐに持って、1本1本丁寧に引き抜いていきます。栄養をたっぷり受けて育ったにんにくは、ずっしりと重い手応えがあります。そして、この手応えこそが農業の醍醐味。ふっくらと暖かな土の中から引き抜かれた瞬間に歓声があがります。参加者の皆さんからは「とれたてのにんにくに触れることができて感激!」「意外に重くて驚いた!」という感想があちらこちらで聞かれました。

有賀教授

引き抜かれたにんにくは、すぐに茎の部分を切り落としていきます。健康家族の社員の指導のもと、参加者全員で協力してはさみを入れていきます。次々と積み上げられるにんにくは、お店で売られているものとは違い、泥だらけの姿でどれも形や大きさが不揃いですが、これこそ農薬や化学肥料を使わない有機野菜の何よりの証拠。有機栽培だからこその不格好さと言えます。確かに、化学肥料や農薬を使えば見栄えの揃ったにんにくを育てることはできるかもしれません。しかし、「良いにんにく」とは形の綺麗なにんにくのことでしょうか? 私が考える「良いにんにく」とは、大地の力をいっぱいに受けて育ったにんにくのことです。健康家族の収穫祭に参加させていただく度に、この農場で収穫されるにんにくこそが「良いにんにく」であると、改めて感じることができるのです。

収穫したにんにく

このように「野菜本来の姿」に直に触れるということは、農業を営む方でない限り、なかなか体験できることではありません。しかし、こうした収穫祭などを通じて、できるだけ多くの方に「本物」を見分ける目を養っていただき、安心・安全な食生活を過ごしていただきたいと願っています。

世界のにんにく事情

世界中のにんにく生産高は、2010年の統計によると約1,770万トンといわれています。
国別で圧倒的に多いのが中国で、約8割近い1,366万トンを生産しています。次いでインド83万トン、韓国27万トン、エジプト24万トン、ロシア21万トンの順で続いています。
1人当たりの年間消費量でみてみると、世界一なのは韓国。世界平均では年間約0.8kgですが、韓国人はなんと年間約7kgものにんにくを摂取しています。パスタが中心のイタリア料理ではにんにくの香りづけが大きなポイントですし、医食同源の中国でも、にんにくは最高峰の食材として挙げられています。インドカレーの濃厚な香りにもにんにくは欠かせません。
ほかにも、アメリカでは1990年に、ガン予防に効果のある食物の研究で発表された「デザイナーフーズ計画」で注目され、消費量が3倍に跳ね上がるなど、にんにくは世界中で食の中心となる食材です。
そして、世界各国ではにんにくの収穫を祝ってさまざまな「にんにくのお祭り」が催されています。

出典・参照
※FAOSTAT(2008年、2010年)

世界中で開かれている「にんにく祭り」

世界のにんにく祭り
世界では、日本にも負けないくらい大規模な“にんにくの収穫祭”が開かれています。その数は毎年30以上にもなるそうです。有名なものとしては、「世界のにんにくの首都」とも呼ばれているアメリカのギルロイ市で10月に開催されている「ガーリックフェスティバル」があります。ここでは、にんにくを使ったさまざまな料理を味わうことができ、3日間で世界中からおよそ13万人もの観光客が訪れるそうです。
このギルロイ市との姉妹都市であるイタリアのモンティチェリ・ドンジーナ町でも、7月に「にんにく祭り」が開催されています。この土地の自慢であるホワイトガーリックの収穫を祝うお祭りで、15世紀に建てられたお城の中で行われ、物産から芸術までバラエティー豊かな内容のイベントとして定着しています。
中世ヨーロッパの面影を残す町、フランスのアルルーでは、8月に「にんにく祭り」が開催されています。世界でも最も伝統のあるにんにく祭りとして知られ、2,200人程度の小さな村に、なんと8万人を超える人が集まります。お祭りではパレードが町を練り歩き、無料のにんにくスープ(Soupe à l’ail)が振る舞われるそうです。
韓国の南海郡でも5月に「宝島にんにく祭り」が行われ、こちらはにんにく産業の活性化に寄与する目的で、学術セミナーや収穫体験などのイベントが盛りだくさんです。
にんにくの品種が多種多様であるように、世界中さまざまな地域でユニークな収穫祭が開催されています。また、これらの都市の間では、にんにくを通じた国際交流も盛んに行われています。
にんにくは体を健康にしてくれるだけでなく、人々の心を元気にしてくれる食物なのです。


有賀豊彦教授

監修:医学博士 有賀豊彦(ありがとよひこ)

日本大学名誉教授/医学博士/健康家族顧問
1980年よりにんにく研究を開始し、1981年にはにんにくオイル中から抗血小板成分としてMATSを発見し、英国の医学誌「ランセット」に発表。以後抗ガン作用の解明を行うなどして、多数の学術論文を発表し、にんにく研究の第一人者として活躍している。
2022年春、「瑞宝小綬章」を受賞。

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