にんにくと血液の関係

血液の流れが止まると脳は5分で死んでしまう!?

血液の流れが止まると脳は5分で死んでしまう!?

人が生きていくためには体の組織が常に活動できるように、絶えず栄養素や酸素を供給し続けなければなりません。この大切な役目を一手に担っているのが血液です。私たちが口から取り入れた食物は胃や小腸で消化した後、栄養素となって血液中に吸収され、いったん肝臓で不要なものや有害なものが取り除かれ、心臓に運ばれます。また、呼吸で取り入れられた酸素は、血液中の「赤血球」が運び手となって心臓に送られます。このように私たちの体は、血液を介して心臓の拍動とともに、栄養素と酸素を体全体に届けています。
人の体を流れる血液の量は体重のおよそ8%。体重50kgの人なら4kgが血液ということになります。血液が流れる血管には動脈、静脈、毛細血管の3種類があり、血管の体積の95%は目に見えない細さの毛細血管が占めていて、体中の血管をすべてつなぐと10万キロメートル(地球を約2.5周)にもなるといわれています。「血液」というと液体をイメージしがちですが、血液中の45%は血球という有形の細胞成分で占められています。酸素の運び手である「赤血球」、侵入してきた細菌やウイルスを攻撃する「白血球」、外傷などの出血時に集まって出血を防ぐ「血小板」などがあります。残りの55%が液体成分の「血漿」で、これも栄養素を運ぶ大切な役割を持っています。
このようにたくさんの大切な成分を含んでいる血液は、体のさまざまな状態を教えてくれる健康管理のバロメーター。病院での一般的な血液検査で検査可能な項目は2,000項目にも及びます。では、この血液の流れが止まってしまったらどうなるでしょうか? 人間の脳細胞は、通常の体温のもとで血流が停止して酸素が供給できなくなると5分で死んでしまいます。救命救急の現場で「心停止から5分経過してしまうと救命は絶望的だ」といわれるのはこのためです。それほど血液の流れは生命維持にとって重要な役割を担っているのです。

血液の防衛機能が引き起こす恐ろしい「血栓症」とは!?

血液の防衛機能が引き起こす恐ろしい「血栓症」とは!?

血液は常に全身を巡り、体を正常に保つためにさまざまな働きをしています。しかし、この血液の流れが止まってしまう恐ろしい病気があります。「血栓症」と呼ばれるものです。
皆さん経験したことがあると思いますが、例えば転んで擦りむいて出血した時に、しばらくすると血が固まって“かさぶた”ができ、血が流れ出るのを防いでくれます。これは血液中の「血小板」が傷口に集まって栓をつくり、固まって止血をするという自然治癒の機能が見事に働くからです。しかし、この“かさぶた”が血管の内側にできた場合を想像してみてください。例えばコレステロールの多い食事などで、酸化された悪玉コレステロールが血管壁の中にたまると血管が圧迫され内壁に傷がつきます。この傷を修復しようと「血小板」が集まり“かさぶた”をつくろうとします。この血管の内側にできる“かさぶた”こそが「血栓」の正体。血液の持つ防衛機能が裏目に出てしまい、結果、血管を詰まらせ血液の流れを妨害してしまいます。特に動脈硬化が進んでいる人は血管の内側の壁の損傷が起こりやすくなります。血栓が脳の血管内にできると「脳梗塞」、心臓を取り巻く冠状動脈内にできると「心筋梗塞」という死に直結する恐ろしい病気につながります。
血栓は本来、役割を果たした後は血栓を溶かす作用が自然に働き、溶けていきます。ところが喫煙や運動不足、肥満やストレスなどによって、血栓が固まりやすく溶けにくい体質になってしまいます。こうした体質を改善するには、血小板が凝集する機能を抑えてあげることが何よりも重要であることがわかっています。血小板の凝集機能を抑える食品としては、イワシやサバなどの油脂に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などがよく知られていますが、にんにくにはこれらの脂肪酸とは異なる、硫黄化合物が含まれていて、血小板を固まらせない強力な力があるのです。

にんにく成分MATSが血栓からあなたの身を守る!

にんにく成分MATSが血栓からあなたの身を守る!

昔からにんにくには血液をさらさらにする働きがあるといわれ、中国では血栓症の治療に、にんにくの搾り汁を点滴するところもあるほどです。しかし、にんにくのどの成分の働きによるものかは長い間わかっていませんでした。1978年になると、インドのボーディアがにんにくのオイル成分に血小板凝集抑制効果があることを明らかにしました。そして、1981年に世界で初めてこの油成分の中から血小板の凝集を最も強く抑える成分の分離に成功したのが私たちの研究室でした。その成分の名は「メチルアリルトリスルフィド(MATS)」。
ガーリックオイル中に約7%含まれている漬物臭の物質でした。この発見は世界で最も権威ある医学誌のひとつである英国『ランセット』誌に発表され大きな反響を呼びました。
MATSが血栓の凝集を抑えるメカニズムはこうです。血管に傷がつくと、そこから血小板を刺激する物質が出てきます。そのことによって、血小板の細胞内でアラキドン酸が代謝されて、トロンボキサンA2(血小板を凝集させる物質)が発生します。トロンボキサンA2は他の血小板にも血栓に加わるように働きかけ、血栓がみるみる大きくなっていきます。ところが、にんにくのMATSが血小板に入るとトロンボキサンA2が発生しなくなるのです。MATSは心臓病や脳卒中の原因となる大きな血栓の発生を防いでくれますが、傷口の修復に必要な小さな血栓はちゃんと残してくれるのです。
このMATSによる血小板凝集抑制作用は、にんにくを食べた後、血液検査でも顕著に現れます。研究では、にんにくを5g食べると約48時間も血小板の凝集力が抑えられることがわかりました。また、男女60人を2群に分けて、一方が毎日にんにくパウダー800mg入りタブレットを、もう一方が偽タブレットを摂取したところ、4週間後、にんにく群の血小板凝集度は摂取前に比べて有意に抑えられた、という研究結果も発表されています。

悪玉コレステロールを追い出すにんにくパワー!

悪玉コレステロールを追い出すにんにくパワー!

にんにくのもうひとつの作用に「悪玉コレステロール」を減少させるという効果があります。
血液中のコレステロールにはHDLコレステロールとLDLコレステロールの2種類があり、HDLコレステロールは余分なコレステロールを全身の組織から肝臓へと回収してくれる働きがあり「善玉コレステロール」と呼ばれます。対してLDLコレステロールは、肝臓から全身の組織に運ばれ、その量が多いと動脈壁に蓄積し動脈硬化を促進させてしまうため「悪玉コレステロール」と呼ばれています。皆さん、テレビや雑誌などで「血液がドロドロになる」という表現を耳にしたことがあると思いますが、これは、血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪が過剰になり、血液が粘り気を持って流れにくくなっている状態を指します。この“ドロドロ血”になってしまうと血管の内壁を傷つけやすくなってしまうので、血栓予防の観点からも悪玉コレステロールを体から追い出す必要があります。にんにく成分の「ジアリルジスルフィド」や「ジアリルトリスルフィド」は、コレステロールの合成を抑え、血中コレステロールを減らしてくれます。
にんにくの世界的な権威、アメリカ・ロマンダ大学医学部のベンジャミン・ラウらのグループは、にんにくを4〜6ヵ月食べることで、体内の悪玉コレステロールの酸化物(過酸化脂質)が約30%減少したと発表しています。また、もともとコレステロール値の高い人に、にんにくを2ヵ月間食べてもらい数値を測定してみると、3分の2に減少していたという報告もあります。しかも、にんにくを食べるのを止めてしまうと、数ヵ月後にはもとのコレステロール値が高い状態に戻っていたというから驚きです。

にんにく習慣で血液メンテナンスを!

にんにく習慣で血液メンテナンスを!

血液の役割としてもうひとつ忘れてならないのが、熱を体全体に広めて体温を調整する機能です。私たちの体は外気温が下がると体温を維持するために、手足や表皮の血管を収縮して血流を低下させ、体内の熱を逃さないように働きます。“冷えは万病のもと”といわれるように、体の冷えによる血流の悪化も血栓を誘発してしまう原因となります。(にんにくの効果効能:冷え症
血流をアップする食品にはふたつの種類があります。ひとつは「血管を拡張する食材」。
にんにくやタマネギなどのネギ科野菜、ブロッコリーなどのアブラナ科野菜がこの代表格です。血管を拡張する食材には硫黄化合物が含まれ、血管の壁を広げるような働きをして、血管内の血液を流れやすくしてくれます。カボチャなどビタミンEを多く含む食材も、血管の内側の内皮細胞に働いて血管を広げる一酸化窒素の生成を促してくれます。レモンや梅干しなどに含まれる酢酸やクエン酸といった酸味成分も、血管拡張の効果が期待できます。
もうひとつは「体を温める食材」です。こちらは熱を発生させる細胞(褐色脂肪細胞)を刺激して体温を上げ、結果的に血流を促すように働きます。体温が上がると、発生した熱を放散するために血液の流れがよくなるのです。代表的なものは、にんにく、ショウガのような辛味を持つ野菜、唐辛子やシナモンなどのスパイス類も挙げられます。このように血流に効果がある食材は2通りに分類されますが、お気づきの通りにんにくは両方の効果を併せ持っています。にんにくを食べると交感神経が刺激されて、ノルアドレナリンの分泌が盛んになります。交感神経が興奮すると、通常は血管が収縮して血圧を上げるのですが、にんにくの場合は硫黄成分が末梢血管を拡張させるため血行がよくなり温かくなった血液が体の隅々まで行き届きます。これは、にんにくの本当にすばらしい作用です。
一方で、にんにくは食べ過ぎると血液中の赤血球を壊してしまうという説もあります。しかし、これは詳しく調べてみますと、生のにんにくを1度に3球以上大量に食べない限りは貧血の症状を起こすことにはならないでしょう。ネズミなどのげっ歯類や犬、猫などでは良く知られたことで気をつけなければなりませんが、人ではそのような報告はありません。普段私たちが1度に食べる量というのはせいぜい1個の鱗茎(りんけい)の中の3片から4片程度ですので、必要以上に神経質になる必要はないでしょう。むしろこうしたリスクよりもメリットの方が大きいので、積極的に食べるのが望ましいといえます。


有賀豊彦教授

監修:医学博士 有賀豊彦(ありがとよひこ)

日本大学名誉教授/医学博士/健康家族顧問。1980年よりにんにく研究を開始し、1981年にはにんにくオイル中から抗血小板成分としてMATSを発見し、英国の医学誌「ランセット」に発表。以後抗ガン作用の解明を行うなどして、多数の学術論文を発表し、にんにく研究の第一人者として活躍している。

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