にんにくの成分・栄養素

にんにくの成分・栄養素

疲労回復や滋養強壮に効果があると言われる、香味野菜の代名詞「にんにく」。しかしながら、どの成分がどのような働きをしているのかは一般的に知られていません。
では、にんにくにどのような栄養と効能があるのか確認していきましょう!

GSAC(ジーサック)

GSACとは「γ-グルタミル-S-アリルシステイン」の略称で、にんにくパワーを発揮する有用成分アリイン、アリシンなどの基盤となっている重要な成分である。
にんにくが土壌中のイオウを吸い上げて最初に作り上げるペプチドという構造で、にんにくの細胞内に溶け込み、におい成分の基となる。
にんにくを傷つける害虫やカビなどの攻撃に備えて、GSACの一部はSACを経てアリインに変換され身構えている。GSACをSACにするために、にんにく中にはトランスフェラーゼとペプチダーゼの二つの酵素を備えている。にんにくの収穫時期になると、これらの酵素が消えていくため、にんにくの中には一定量のGSACが残されている。
これを応用して、2001年11月に(公財)日本健康・栄養食品協会が「にんにく食品規格基準」を設定した際に規格成分として採用し、「にんにく加工食品」として名前を表記するには、このGSACがグラムあたり1.5mg以上含まれていることが前提となっている。
それ以下の含有量のものは「にんにく含有食品」と記さなければならない。

アリイン

無傷のにんにくに含まれる非タンパク性の含硫アミノ酸で、にんにくを傷つける外敵である昆虫やカビ、イノシシなどに対抗して、刺激臭や殺菌作用を発揮するアリシンの元の成分である。
アリインからアリシンへの反応は、障害部位から出てきた酵素アリイナーゼによって速やかに行われる。
にんにくを調理する際、にんにくを無傷のまま加熱すると、熱に弱いアリイナーゼが活性を失うため、アリインはアリシンになることなく、またにおうことなく食べられ身体に摂り込まれることになる。このアリインの摂取によって、身体が温められたり元気が出たりと、にんにくのスタミナ機能を享受できることが確認されている。

アリイナーゼ

生にんにくに含まれる酵素。にんにくの細胞の中に存在し、草食動物から身を守るための効果をもつ。
動物がにんにくを嚙み潰したり、ヒトがにんにくに包丁を入れたり、擦ったりした時に細胞が破壊されると、貯蔵細胞からアリイナーゼがでてきて周囲にあるアリインに作用し、刺激性の強いアリシンを生成する。

アリシン

にんにくは、傷をつけない限りにおわないネギ属の野菜である。
少しでも傷つけると、その部分に限ってにおいが生じ出る仕組みになっている。このにおいこそ、アリシンという殺菌成分であり、動物の嫌う刺激成分である。アリシンの殺菌対象は、細菌からカビまで広範囲にわたり、動物においてはにんにくに歯を立てることすらないとされている。
アリシンは、水の中では比較的安定で、特に4℃前後の冷水中では数週間、その殺菌力を維持している。
また、アリシンは生にんにくを切り刻んだり、すりおろしたりすると生成されるが、調理する(温度をかけたり、油を使ったりする)過程で容易にスルフィドに変化し、食品機能を発揮する。ジアリルジスルフィド(DADS)やジアリルトリスルフィド(DATS)などがそれである。
これらのスルフィド類は、抗がん作用、血栓防止作用、スタミナ増強作用、解毒作用など多くの作用がある。
つまり、にんにくを切り刻んだり、すりおろしたりして、できるだけ多くのアリシンを生じさせて調理すると、より多くの機能性成分スルフィドになってにんにくの食品機能をより強く発揮することにつながるのである。

ジアリルトリスルフィド(DATS)

にんにくが持っているアリイン(イオウを含むアミノ酸)は、にんにくを傷つけるとアリイナーゼという酵素と反応して、においのある殺菌成分アリシンを作り出す。におい、刺激性、殺菌作用などを発揮して、傷をつけた敵である昆虫やカビ、さらには動物までも見事に撃退し身を守るのである。
ヒトがにんにくを調理するとき、にんにくはこれまでに経験したことのない大きな傷を負うため、精一杯のアリシンを作り出す。刺激の強いアリシンは、鍋の湯の中やフライパンのオイルの中で急速に分解・結合して、数種類のスルフィド類というにんにく特有のにおい成分に変化する。
ジアリルトリスルフィド(DATS)はこのスルフィド類のひとつであり、揮発性のイオウ化合物である。DATSには、ガン細胞の増殖を抑え、寿命のある正常な細胞に戻してガン細胞を消滅させる働きがあるため、ガン治療の大きな課題となっている副作用の問題を解決し得る成分として注目を集めている。
DATSは、にんにくを細かく切ってオイルで低温加熱する調理法で効果的に得られるため、ガーリックオイルを常用するイタリア料理、スペイン料理などが最適な調理法である。

ジアリルジスルフィド(DADS)

ジアリルトリスルフィド(DATS)とともに、アリインがスルフィド類に変化して発生するスルフィド類のひとつ。二硫化アリルとも呼ばれ、黄色みを帯びた水に溶けにくい成分であり、にんにく特有の刺激臭を有する成分のひとつでもある。
肝臓の解毒作用を強める作用や、神経細胞を酸化ストレスから保護して正常な機能を維持する作用があることがわかっているほか、活性酸素を除去してガン細胞(特に大腸ガン)が出来ないような良い環境を作り出す。
このジアリルジスルフィドは、にんにく料理を食べた後でにおう口臭の主な原因物質である。

メチルアリルトリスルフィド(MATS)

1981年、日本大学の有賀豊彦教授(当時)の研究室が、にんにくオイル中から発見した物質。にんにくのスルフィド類のひとつ。血小板の固まりを抑える作用があり、血小板血栓を起因として発生する症状である脳卒中や心筋梗塞、動脈硬化を予防する効果が期待される。

S-アリルシステイン(SAC)

S-アリルシステイン(SAC)は、にんにく中のγ-グルタミル-S-アリルシステイン(GSAC)という防衛上の貯蔵物質からアリイン(イオウを含むアミノ酸)を生じる間の、いわゆる中間生成物のことである。
SACが生成されると、SAC酸化酵素がすぐに酸化してアリインに変換してしまうため、にんにく中にはごく微量が存在するだけである。 (この酵素は、数年前に日本の研究者によって発見されたばかりのものである)
SACが知られるようになったのは、AGE(Aged Garlic Extract:にんにくの破砕物を20%アルコール中に6か月間漬け込んだもの)の機能成分を日本の製薬会社がスタミナ付与成分として扱ったからである。

アリチアミン

にんにくの有効成分「アリシン」とビタミンB1が結びついて形成される物質。
エネルギーを発生させる過程に欠かせない栄養素であるビタミンB1は、水に溶けやすいため失われやすいが、両者の結びつきによってビタミンB1が油に溶ける性質を獲得し体内に吸収されやすくなる。
市販の「アリナミン」は、当初このアリチアミンを製品化したものであった。

アホエン

1983年にスペインの研究者らは、にんにくの摩砕物(すり潰し)を食用油に漬けることで生成される血小板抑制成分を構造決定して、アホエンと命名した。
その作用は前記のメチルアリルトリスルフィド(MATS)より強力という。
現在の解析により、アリシンが3分子集まって、2分子のアホエンを作り出すことが明らかにされている。研究者らによると、アホエンには殺菌作用もあるということである。


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