にんにくの血圧低下作用

にんにくには、一般的な降圧剤にも劣らないほど血圧を下げてくれる効果があります。にんにくを食べると体中がぽかぽかするイメージがあるため、血圧が上がるのではないかと考える人もいるようですが心配は要りません。にんにくの血圧低下作用は科学的にも実証されています。
にんにく成分がどのように血圧を下げるのか、その仕組みを解き明かしていきましょう。

有賀豊彦教授

監修:医学博士 有賀豊彦(ありがとよひこ)

日本大学名誉教授/医学博士/健康家族顧問。1980年よりにんにく研究を開始し、1981年にはにんにくオイル中から抗血小板成分としてMATSを発見し、英国の医学誌「ランセット」に発表。以後抗ガン作用の解明を行うなどして、多数の学術論文を発表し、にんにく研究の第一人者として活躍している。

静かに忍び寄る高血圧の恐怖

静かに忍び寄る高血圧の恐怖

にんにくの血圧低下作用についてお話をする前に、まずは血圧についての理解を深めましょう。血液は心臓のポンプ作用によって全身に押し出されますが、血管を流れる血液が血管壁に与える圧力のことを「血圧」と呼びます。心臓が収縮して血液を送り出すときに血圧が最も大きくなります。この時の血圧を「収縮期血圧(または最高血圧)」といいます。反対に心臓が拡張する時の血圧は最小となり「拡張期血圧(または最低血圧)」といいます。

血圧を表す時には「mmHg(ミリ水銀)」という単位が使われます。高血圧の基準値は140/90mmHgであり、疫学調査の結果からもこの基準を越えると明らかに危険度が増すといわれています。
高血圧は、別名「サイレントキラー(静かなる殺人者)」と呼ばれています。私たちの体は血圧が少し高いくらいではほとんど自覚症状がありません。しかし、高血圧の状態を長期間放置していると、心臓や脳、腎臓などがじわじわと蝕まれていき、ある日突然に脳卒中や心筋梗塞といった発作を引き起こすのです。それこそがサイレントキラーと呼ばれる所以です。

高血圧の原因は、塩分のとりすぎや運動不足、ストレスなどの生活習慣が主な原因ですが、加齢や遺伝的な要因も関係します。2006年国民健康・栄養調査によると、40~74歳の日本人のうち、男性は約6割、女性は約4割が高血圧(140/90mmHg以上)という結果がでています。先にも述べたように、高血圧には特有の自覚症状がほとんどありませんから、定期的に血圧を測っていないと高血圧を発見することは難しく、また、せっかく早いうちに発見できても「生活には困らないから」と放置してしまう人が多くいます。高血圧は死に直結する恐ろしい病気ですから、早いうちから生活習慣を見直し、きっちりとした血圧管理に努めなくてはなりません。

にんにくは3つの成分が血圧を下げる

高血圧と診断された場合、通常は降圧剤が処方され、血圧を下げることになります。もちろんそれでよいのですが、いつまで薬を飲み続けるのか心配になります。そこで、毎日の食事を見直してみるのはいかがでしょうか。食事の中に血圧を下げる食品が入っていれば、特別努力せずとも血圧は下がってくるのです。今、「食べる降圧剤」として評価が高まってきているのがにんにくです。それでは、にんにくはどのように血圧を下げてくれるのでしょうか。
にんにくには他の野菜・果物と比べてみると、とても多くの「イオウ化合物」が含まれています。

このイオウ化合物こそが血圧低下作用の秘密。このイオウ化合物は調理の仕方などによって、さまざまな形に変化しますが、血圧に作用する場合は重要な3つの成分が考えられます。

成分1 アリイン

アリインは、にんにくを切ったりすりおろしたりしたときに細胞が壊れ、酵素の働きで分解されて、にんにく特有のにおいを発する「アリシン」となり、殺菌作用などを発揮します。
アリインは、にんにくを加熱調理すると、酵素が働かないために、そのまま摂取されることになります。
アリインは、体内のアミノ酸の輸送システム(トランスポーター)により腸管からよく吸収されて、血液中にある脂肪や褐色脂肪組織の脂肪の燃焼を盛んにし、身体を温めるとともに、コレステロール値の上昇を抑えて血行を促進してくれる効果があります。血液の流れが良くなることで血圧は自然に低下するのです。
ちなみに生のにんにくを切ったり、つぶしたりすると、前述の通りアリインからにおい成分アリシンをつくり出します。そのアリシンは辛味物質で、口の中、食道、胃と消化管の粘膜に着いてしまうので血液中には現れません。しかし、最新の追跡研究によって、タンパク質の中のシステインというアミノ酸に結びつくことが分かりました。このタンパク質は、胃や腸内での消化をうけてS-アリルシステイン(SAC)となって吸収・代謝されて、血管の壁を押し広げることで血液の流れをスムーズにし、血圧を下げる効果を発揮するものと考えられます。

成分2 スルフィド類

2つめの成分は「スルフィド類」です。
スルフィド類はアリシンをオイルに溶かした時に分解・結合して生成される揮発性のイオウ化合物です。スルフィド類は、血液中の血小板の粘着力を弱める血小板凝集抑制作用をもっており、血液の流動性を高めて血圧を下げる作用をもっています。また、交感神経を刺激して代謝を促す効果もあります。通常は交感神経が刺激されると血管が収縮しますが、にんにくの場合は、熱を作り出して末梢血管を拡張させるという作用があるため、血圧を上昇させることなく全身の血流を促すという優れた作用がもたらされます。

成分3 硫化水素

3つめの成分は、にんにくを食べた後に体内で生成される「硫化水素」です。
硫化水素というと、少し前までは毒ガスとして悪名高かったのですが、今日では体内で血管拡張のためのガス状信号物質として働いているということが判明しました。体内の血管は硫化水素が混入することで血中の酸素濃度が低くなったと勘違いします。すると酸素を多く取り込もうとして血管を拡張させるため、血管内の圧力が下がるのです。

にんにくを食べることによる血圧低下には、以上の3つの成分と機能が総合的に関与したものと考えることができます。

にんにく卵黄を用いた研究結果

にんにく卵黄を用いた研究結果

私たちの研究グループでは、にんにくの血圧低下作用および安全性を検証するため、「にんにく卵黄」を用いた比較試験を行いました。この研究は、被験者83人をグループ分けし、片方のグループには「にんにく卵黄」粉末が含まれたカプセルを、もう片方のグループには「プラセボ(偽物の薬)」を1日2錠服用してもらい、12週間後に服用終了、さらに4週後に最終検査を行い、血圧がどのように変化しているかを測定するというものです。
実験の結果、「にんにく卵黄」を服用したグループは、収縮期血圧(最高血圧)・弛緩期血圧(最低血圧)とも有意に血圧が低下していましたが、「プラセボ」を与えたグループには変化がありませんでした。また、被験者の体調にも異常はみられないことから、一般的な降圧剤より安全に血圧を下げることができるということが確認できました。このデータから「にんにく卵黄」などのサプリメントは、血圧の調整に役立つといえます。

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